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エニアグラムで解き明かす、9つの営業スタイル必勝法

「営業向きの性格」なんて、本当は存在しない

「自分は口下手だから、営業職には向いていない…」 「あの人のように、もっと積極的にいかなければ、営業では成功できない…」

多くの営業職の方が、こうした「理想の営業像」と「現実の自分」とのギャップに悩んでいます。世間で言われる「営業向きの性格」とは、一般的に、社交的で、エネルギッシュで、押しが強い、といったイメージでしょう。

しかし、断言します。その考え方は、今日限りで捨ててください。

エニアグラム心理学が解き明かすのは、**「営業に向いている単一の性格」ではなく、「9つの、それぞれ全く異なる、しかしどれもが正解となり得る、営業の勝ちパターン」**の存在です。

この記事は、あなたが無理に他人を演じることをやめ、あなた自身のタイプが持つ「自然な強み」を、営業という戦場で最強の武器に変えるための、パーソナル戦略マニュアルです。

第1章:「営業」するな。「あなた」であれ。

トップセールスと呼ばれる人々をよく観察すると、そのスタイルは驚くほど多様です。猛烈な勢いで案件をクロージングする人もいれば、顧客と何時間も雑談するような関係性の中から、自然と契約が生まれる人もいます。

成果が出ない営業担当者の多くは、自分と全く違うタイプのトップセールスを無理に模倣しようとして、自滅しているのです。顧客は、その不自然さや、自信のなさを敏感に感じ取ります。

成功への本当の近道は、ただ一つ。**「営業向きの性格」になろうとするのをやめ、「タイプ〇(あなたのタイプ)のプロとして、顧客の問題を解決する」**と、腹を括ることです。あなたのその「ありのままの姿」こそが、顧客にとって最も信頼できる姿なのですから。

第2章:9つの必勝営業スタイル

それでは、9つのタイプ別に、あなただけの「必勝営業スタイル」とその強み、そして注意すべき「落とし穴」を具体的に解説します。

  • タイプ1:コンサルタント営業
  • 必勝スタイル: 誠実さと、非の打ち所がない商品知識、そして「顧客にとっての正しさ」を追求するコンサルタントとして、絶対的な信頼を勝ち取るスタイル。
  • 強み: 正確な情報提供、論理的な説明、約束の遵守。
  • 落とし穴: 顧客の要望が「正しくない」と感じると、批判的になったり、柔軟な対応ができなかったりする。
  • タイプ2:リレーションシップ営業
  • 必勝スタイル: 顧客一人ひとりに心から寄り添い、「あなたのために」という献身的なサポートで、強固な人間関係を築き、紹介やリピートで成果を上げるスタイル。
  • 強み: 驚異的な共感力、面倒見の良さ、顧客のキーパーソンに気に入られる能力。
  • 落とし穴: 相手に嫌われたくない一心で、無理な要求を飲んだり、強くクロージングできなかったりする。
  • タイプ3:スタープレイヤー営業
  • 必勝スタイル: 華やかなプレゼンテーションと、「これを導入すれば、あなたは成功者になれる」という輝かしいビジョンを提示し、顧客を魅了して即決させるスタイル。
  • 強み: 高い目標達成意欲、カリスマ性、自分をブランド化する能力。
  • 落とし穴: 「契約を取る」というゴールに集中しすぎ、契約後の顧客の成功や満足を軽視してしまうことがある。
  • タイプ4:ブティック営業
  • 必勝スタイル: 「これは、他とは全く違う、あなただけの特別な一品です」と、商品やサービスの持つ独自の物語性や美学を伝え、顧客の感情を揺さぶるスタイル。
  • 強み: 独自の世界観の構築、深いレベルでの顧客への共感、高付加価値商材の販売。
  • 落とし穴: 価格や機能だけで判断する顧客や、ありきたりな商品を売ることに、モチベーションを見出せない。
  • タイプ5:テクニカル営業
  • 必勝スタイル: 誰にも真似できない圧倒的な専門知識と、客観的なデータを用いて、顧客の疑問や不安を完璧に解消し、「専門家」としての信頼を得るスタイル。
  • 強み: 深い製品理解、論理的な分析力、冷静な課題解決能力。
  • 落とし穴: 専門的な説明に終始してしまい、顧客との感情的な繋がりを疎かにしがち。
  • タイプ6:リスクマネジメント営業
  • 必勝スタイル: 「この契約には、このようなリスクが考えられますが、その対策として…」と、顧客が抱えるあらゆる不安を先回りして提示し、その全てに万全の備えがあることを示すことで、「絶対的な安心感」を売るスタイル。
  • 強み: 誠実さ、慎重さ、高い危機管理能力。
  • 落とし穴: 心配性が行き過ぎて、かえって顧客の不安を煽ってしまい、決断を先に延ばさせてしまう。
  • タイプ7:ビジョナリー営業
  • 必勝スタイル: 顧客自身も気づいていないような、新しい可能性や未来の楽しさを提示し、「なんだかワクワクする!」という期待感で、商談の扉を開けるスタイル。
  • 強み: 豊かな発想力、ポジティブなエネルギー、複雑な課題を面白く語る能力。
  • 落とし穴: アイデアを話すのは得意だが、契約後の地道なフォローアップや、細かい事務作業に興味を失いがち。
  • タイプ8:パワーネゴシエーター営業
  • 必勝スタイル: 相手が誰であろうと物怖じせず、本質的な議論で相手の懐に飛び込み、力強い交渉と決断力で、大型案件をまとめてしまうスタイル。
  • 強み: 圧倒的な交渉力、決断力、困難な状況を突破するエネルギー。
  • 落とし穴: 時にその強引さや威圧感が、気の弱い顧客を怖がらせ、案件を壊してしまうことがある。
  • タイプ9:信頼のアドバイザー営業
  • 必勝スタイル: 決して売り込まず、まず相手の全てを、静かに、深く、受け止める。その上で、顧客にとって本当に調和のとれた解決策を、そっと提示することで、「この人なら全てを任せられる」という絶対的な信頼を得るスタイル。
  • 強み: 卓越した傾聴力、受容力、安心感を与える存在感。
  • 落とし穴: 「押す」ことが極端に苦手で、クロージングのタイミングを逃し、いつまでも「良い相談相手」で終わってしまう。

第3章:最強の「営業チーム」の作り方

マネージャーの方へ。あなたのチームの成果を最大化する秘訣は、全員を同じ営業スタイルに矯正することではありません。それは、9つの異なる営業スタイルを持つメンバーを、適材適所で配置することです。

新規開拓の「オープナー」はタイプ7に。大型案件の「クローザー」はタイプ8に。既存顧客との関係維持を担う「ファーマー」はタイプ2に。技術的な説明が必要な場面ではタイプ5に。それぞれの必勝スタイルが最も輝く役割を与えることで、あなたのチームは、どんな市場でも勝ち抜ける、最強の布陣となります。

結論:最高の営業は、「あなたらしさ」から始まる

もう一度、繰り返します。理想の「営業向きの性格」を追い求めるのは、今日で終わりにしましょう。

あなたの営業職としての成功は、あなたの中にすでに眠っています。エニアグラムは、その眠れる才能を目覚めさせ、あなただけの「勝ちパターン」を教えてくれる、最高のビジネスパートナーです。

顧客は、完璧なトークスクリプトではなく、あなたという人間の「本物」を求めています。あなたらしさを、自信をもって、顧客に届けてください。